イーグル工業株式会社 岡山事業場 様

設備管理を劇的に効率化した新・中央監視システム
メカニカルシールなどで圧倒的な世界シェアを誇るイーグル工業株式会社。その主力拠点の一つである岡山事業場において、工場の設備管理の高度化を目指す取組みの一環として、2019年に中央監視システム「Remces(レムセス)」を導入いただきました。
”省エネ制御 × どこでも監視 × データ活用”
イーグル工業岡山事業場は、自動車用メカニカルシールを中心に、建設機械向け機器、産業機械向け製品など多岐にわたる製品を生産する主要生産拠点の一つです。ここには製造棟や管理棟を含む約10棟の建物があり、約900名の従業員が製造その他の業務にあたっています。2019年、設備管理の効率化を図るために中央監視システムをリニューアルすることになり、株式会社RYODENが提供するIoTプラットフォーム「Remces」が採用されました。

クラウド化で実現した効率的な設備管理 ~人力依存からの脱却~

導入の経緯について、工場の生産技術全体を統括する生産技術部長の間野隆氏、ユーティリティ管理部門の責任者を務める設備管理課の飯田武氏、実際にユーティリティ管理を担う同課の川上淳氏の3名にお話を伺いました。

左から:生産技術部 設備管理課 課長 飯田武氏
生産技術部 部長 間野隆氏
生産技術部 設備管理課 係長 川上淳氏
お客様の声 : Remces導入前の課題
人力頼みのシステム運用を何とかしたい
2019年に稼働開始したRemcesは、岡山事業場の中央監視システムとしては3代目です。もともとはA社製の中央監視システムが運用されていたところ、導入から20年以上が経ってメーカーのサポートが終了。そこで急遽B社製のシステムを導入したものの、突貫で更新したこともあって機能面での改善が果たせず、不便な点や不具合が残ったまま運用を続けていたそうです。
「従来の中央監視システムにもユーティリティ設備の状態監視機能や空調管理の機能はありました。ですが操作が固定端末に限定されること、個々の運用は人力頼みということから、設備管理部門への作業負荷が高い状態が続いていました」と話すのは、ユーティリティ管理の実務を担う川上氏です。現場では次のような運用上の課題が発生していました。

- 夏場のデマンド制御は人力頼みの運用
デマンド制御は、30分単位の平均電力(デマンド値)が契約電力を超えないように電力使用量を抑制する仕組みです。従来のシステムはデマンド警報が出ると決められた順番で空調機器を自動停止する機能があったものの、その停止順序が固定されていたため、いつも同じエリアばかりが停止対象になって現場から不満が出ていました。そこで暑い時期は設備管理の担当者2名が常に端末に張り付き、電力と室温を見比べながら「次はここを止めよう」と手動で操作していました。
- 夜間・休日の設備異常発生時の対応
例えば夜間にコンプレッサーが異常停止した場合、従来のシステムでは生産技術室と守衛室に警報が出る機能がありました。ただ「異常発生」という事実しかわからないため、夜間や休日でも守衛が現場確認に急行し、その後設備管理担当が連絡を受けて詳細の確認に出向く必要がありました。
設備管理課にかかる負荷について話す飯田氏 「トラブルの程度によっては、すぐに対応が必要なケースもあれば、翌日の始業時まで様子を見ても問題ないケースもあります。ところが従来のシステムでは、全ての異常で時間を問わず出動しなければなりません。時には専門分野が違うスタッフが対応せざるを得ないケースもあり、守衛にも設備担当にも大きな負荷がかかる状況でした」(飯田氏)
- データ取得に手間がかかる
さらに電力使用量などの各種データ管理にも課題がありました。「データがパソコンのハードディスクに保存されていたので、他部署からデータを求められた場合などには担当者がUSBメモリでCSVデータを取り出し、エクセルでデータを整理して資料を作る……という手間をかけていました」(川上氏)
お客様の声 : Remces導入の決め手
既存設備を活用できるオープンプロトコル対応のシステム
これらの課題を解決するため、新しい中央監視システムとして「Remces」の検討が始まりました。採用の決め手になった主なポイントは次の3点です。
インターネット経由で、場所を問わず設備状況を確認できる。
既設の配線や機器が利用できるため更新工事費と工期を大幅に削減できる。
サイクリック仕様のデマンド制御など我々の要望にそった機能を柔軟に開発してくれる。

既存設備を活用してシステムを導入できるのがRemcesの特徴の一つ。岡山事業場では20年以上稼働する設備と接続している。
さらにグループ会社で既に導入実績があり、消費電力量削減などの成果が出ていたことも後押しになり、岡山事業場での採用が決定。2019年からシステムの稼働が始まりました。
お客様の声 : 現在の使用状況とRemcesに対する評価
クラウド活用で実現した”どこでも監視”
現在Remcesは工場内の各所に設置された温湿度センサや配管の流量計、pHメータなど各種計測機器のデータを取得し、独立したネットワーク回線でクラウドに送信しています。設備管理担当者がどこにいてもPCやスマホで稼働状況を確認でき、異常が発生した場合は関係者のスマートフォンにすぐに通知が届くため、状況に応じた対応がいつでもどこでもできるようになりました。

- インターネット経由で機器の運転状況確認、遠隔操作
- 異常発生時のメール送信
- デマンド制御のサイクリック化(空調制御を順番に行う仕組み)
- 空調設備の設定変更
- ユーティリティ機器のスケジュール運転
- 蓄積データの分析(電力、エアー、水)

間野氏は「Remcesの導入でユーティリティ設備の管理工数が大幅に削減できたことは大きな成果」と手応えを感じています。「特に夏場は空調制御に2人張り付きで対応していたにもかかわらず、現場からは『暑い』という声が上がってきていたので、ストレスも大きかったことと思います。異常発生時の対応も大きく変わりました」

現場実務を担う川上氏が教えてくれた「特に助かっている機能」は次の3点です。
- 空調のサイクリック制御
エリアごとの使用電力量や室温がリアルタイムで見えるだけでなく、部屋ごとに順番に出力を調整するサイクリック制御が実現。夏場は2名が常駐で管理していた空調制御をシステムに任せられるようになり、その分の時間を設備の予防保全など、本来注力すべき業務に使えるようになりました。あわせて現場からの「暑い」「不公平」というクレームもなくなったということです。
- 異常発生時のメール配信
夜間や休日の異常発生時にはすぐ担当者にメールが送信され、「至急対応が必要な異常かどうか」をシステム上で確認できるように。これにより現場確認のための深夜出勤・休日出勤する必要がなくなり、負荷が大きく減りました。
モバイル端末に表示されたRemcesのデータと現場の制御盤を確認する川上氏 - 空調機の温度・運転モードの遠隔操作
システムの画面を確認していると、空調の切り忘れや設定温度が極端に低い部屋などに気付くことがあります。そのような場合も現場に出向くことなく手元で操作できるので、消費電力量削減だけでなく、対応工数の削減にも貢献しています。
データ活用で進化する設備管理
システム導入から約5年が経過した今、現場では新たな活用方法も生まれています。
「たとえば、生産計画に合わせたユーティリティ設備の自動制御は、大きな効果を生んでいます」と飯田氏。「休日など工場の稼働率が低下する時間帯は、コンプレッサーの稼働台数や設定値の調整を行っていますが、従来は20%程度の負荷でアイドリング運転を続けていた設備も状況に応じて停止することで、消費電力量の削減につながりました」
また、カーボンニュートラルへの対応がサプライヤーにも求められる昨今、特にヨーロッパのメーカーからは製品採用可否の検討段階から「生産工程のエネルギー使用量」の問合せが増えているとのこと。そのような場合にもRemcesで取得したデータを使って回答できるようになりました。
お客様の声 : 今後の展望
Remcesは現場の手放せないツールになった
今後の展開について飯田氏は、設備の予防保全への活用にも期待しています。「たとえばコンプレッサーの圧力変動データと電力使用量の相関関係を分析することで、異常の予兆を捉えられないか……。そんな可能性も検討しています」
川上氏は「ユーティリティ設備という止められない装置の監視・管理において『いつでも、どこでも』状態を確認できること、異常がプッシュ配信されることは、とても大きなメリットです。また、各種計測機器をシステムに接続できるため、データの推移監視のみならず、カーボンニュートラルに向けた活動でも大いに役立っています」と話してくれました。

今後は生産設備から収集した電力やエアー使用量データなど、システムの活用範囲を広げる検討を進めていきたいということです。
システム概要
Remcesはさまざまな通信プロトコルに対応しているため、イーグル工業では既設の配線や機器を利用し、システム更新にかかる工事費と工期を大幅に削減することができました。

- 温湿度、消費電力量、水の流量などの監視とデータ蓄積
- 空調機のサイクリック制御
- 各種機器の遠隔操作
- 系統図や図面のPDFを保存し、遠隔アクセス
- ユーティリティ機器のスケジュール運転
- 生産設備からのデータ等、他システムとの連携

【取材協力】 イーグル工業株式会社 岡山事業場 https://www.ekkeagle.com/jp/